Cultureカルチャー

2021年8月6日

バーチャルトリップ vol.2 ジェノヴァ

オリンピックが始まり、早いもので2週間。閉会式まであと2日を残すのみとなりましたね。イタリアも、久々に陸上で金メダルを2つ獲得し、大変盛り上がっています!

今日は『バーチャル・トリップ』第2弾、リグーリア州のジェノヴァへご案内します。リグーリア州は、イタリアの北西部に位置し、西はフランスと国境を接します。そう、ジェノヴァから海岸線をずっとフランス方面に進むと、南仏コート・ダジュール。
まるで東京人が熱海に行くような感覚です。

リグーリア州は、ヴァッレ・ダオスタ州、モリーゼ州に次ぐ小さな州ですが、人口は160万人以上と多く、人口密度が高い州です。海と山に挟まれた細長い土地に多くの住民が住んでいます。
州の65%が山岳地帯で、35%が丘陵地帯、平野はなんとゼロです。ジェノヴァの街中を歩いていても、坂道ばかりで「平野部ゼロ」ということが実感できます。

美しい海と背後にそびえる山という自然に恵まれたリグーリアはイタリアでも屈指の観光地。音楽祭で有名なサンレモ、セレブが集まる港町であるポルトフィーノ、世界遺産に登録されているチンクエ・テッレなど数多くの名勝地があります。

海辺だけではなく、内陸に入ると自然豊かな国立公園や「イタリアの最も美しい村(Borghi piu’ bellid’Italia)」クラブ認定の国家遺産リストにも名を連ねる美しい村々も存在します。もちろん、食の楽しみもたくさん!海の幸と山の幸が短距離の移動で楽しめるのは、細長い州の形の恩恵なのかもしれないですね。

その細長い州のほぼ中央に、州都ジェノヴァがあります。

ジェノヴァといえば、言わずと知れたイタリア最大の港町。今でも多くの大型客船や貨物船が行き来しています。その歴史は古く、紀元前 6世紀頃より人類が居住していたとされ、考古学的な遺跡や資料も発見されています。中世にはジェノヴァ共和国として自治体を持ち、同様に海洋共和国として発展してきたアマルフィ、ピサ、ヴェネツィアと対抗しつつ、勢力を発揮してきました。黄金時代には、ジェノヴァの貴族たちが銀行業で富を築き、華麗なる都市という意味を持つ、”La Superba”と呼ばれていました。その華麗な黄金時代を思い起こさせる場所も市内に点在しています。そして、ジェノヴァといえば忘れてはならないのは、クリストファー・コロンブス(イタリア語では、クリストフォロ・コロンボ)。

今やイタリア料理に欠かせないトマトをイタリアにもたらしたコロンブスの生家もジェノヴァにあります。では、旧市街の入り口にある彼の生家からジェノヴァ散策を始めましょうか。

コロンブスの生家は新市街と旧市街の境目にあります。コロンブスが4歳~9歳まで暮らしたというこの小さな家は見学をすることができます。そして、中庭には中世の回廊があります。小さな回廊ですが、オリーブの木に囲まれてとてもリラックスできる場所です。

話は飛びますが、写真のコロンブスの生家にはためいている旗、どこかで見覚えがありませんか?この二つの旗の「競演」は記憶に新しいのではないでしょうか?そう、イタリア全土が大興奮したサッカーのEURO2020です。右はもちろん、イタリア国旗。そして、左は「イングランド」と思う方が多いのではないかと思いますが、実は、これ、ジェノヴァの市旗なのです。ジェノヴァがかつて強大な力を持っていた時代、地中海を航行していた英国の商人たちは、ジェノヴァ共和国の国旗(聖ジョルジョ十字と呼ばれる白地に赤十字の旗)を掲げていれば、海賊は怯え、英国商船への攻撃をしなくなるだろうと考えたのです。そこで1190年、イングランド王国は正式にジェノヴァ共和国に対してこの旗の使用の承諾を請い、その見返りとして毎年一定の使用料を支払うことを約束しました。この使用料は1746年まで支払われた記録が残っているそうですが、それ以降の支払いは確認されていないとのこと。ということで、実際はこれ、今でもイングランドがジェノヴァから借りている旗なんです。

話がまた逸れました・・・汗

この回廊を抜けると目の前に聳え立つ大きな門、ポルタ・ソプラーナがあります。この門は、神聖ローマ帝国のフリードリッヒ1世の攻撃から町を守るために1155年~1158年にジェノヴァ人によって建設されました。

ここから旧市街が始まります。ジェノヴァの旧市街は、カルッジョ(Caruggio)と呼ばれる細い道がごちゃごちゃと交差しています。暗くて怖い場所もところどころありますが、実は歴史あるお菓子の名店、フォカッチャ屋、生パスタ屋やトリッパ屋、もちろん精肉店や魚屋など、楽しいお店が所狭しと並んでいて、宝探しをしているようでワクワクします。

カルッジョの中に迷い込むとこのコラムも終わらないので、カルッジョ案内はまた次回のお楽しみということで、今回はジェノヴァ市の端っこにある私の大好きなボッカダッセへご案内します。

ここは、ジェノヴァ市内からバスや徒歩で行くことができる小さな漁村です。

リグーリアならではのパステルカラーの家々は夕陽を纏うとさらに美しさを増します。リグーリアの家々はパステルカラーをしていますが、これは漁師が自分の家が遠く海上からでもわかるようにするためでした。とても小さな漁村ですが、美味しいレストランやフォカッチャ屋、また、ジェノヴァで最古と言われているジェラート屋もあります。ジェノヴァを訪れた際にはぜひ足を延ばして訪れていただきたい場所です。

さて、ジェノヴァといえばやはりこれ!ペスト・ジェノヴェーゼのお話をしないと終われません。ペスト・ジェノヴェーゼはジェノヴァ人の心の料理。材料は、バジリコ、にんにく、松の実、ペコリーノ、グラーナまたはパルミジャーノ・レッジャーノ、オリーブオイル、塩だけ。これらの材料をモルタイオと呼ばれる大理石のすり鉢に入れてすり潰してできるソースなのですが、現地で食べるとバジリコの黄緑の鮮やかさと優しい味わいに感動します。バジリコはジェノヴァの西側にある町、PRA’(プラ)のものを使います。葉が小振りで丸く、デリケートな味がします。
そして、にんにくはリグーリア州インぺリアのアッローシャ渓谷にある11つの村で栽培されているヴェッサーリコのにんにくを使うのが本流なんだとか。このにんにくは、アロマ豊かで繊細な味わい。生で食べても消化しやすいにんにくです。バジリコにしてもにんにくにしても、共通しているのは、両方ともリグーリア海からの海風の影響を受けているということ。伝統的なレシピでは、松の実はお隣トスカーナ、ピサの松の実を使います。

ペスト・ジェノヴェーゼに合わせるパスタは様々ですが、ベスト3は、トロフィエ、ニョッキ、ラザーニャ(ジェノヴァ方言で、「絹のハンカチMandilli de Saea」といいます。)です。どれも美味しいのでいつかジェノヴァで食べ比べしてみてください!

そして、ワイン。ジェノヴァ人は、ペストに合わせるワインは断然ピガート!と口を揃えて言います。(ピガートもヴェルメンティーノも実は同じ遺伝子をもつそうですが)やはり材料もポネンテ(西側)のものを使っているので、同じテロワール同士、相性がよいのでしょうか?

東京では、毎日最高気温を更新中で暑い日が続きますね。。。そんな時は、火を使わずにできるペスト・ジェノヴェーゼ。モルタイオがなくてもフードプロセッサーがあれば簡単にできますので、ぜひ、ラモイーノのピガートと一緒にいかがでしょうか?バジリコの清涼感で体感温度が少し下がるかもしれませんよ!


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