Cultureカルチャー
2021年11月16日
バーチャルトリップ vol.9 カラブリア
みなさま、こんにちは!
今回のバーチャルトリップの行き先は、イタリアをブーツに喩えると「つま先」部分にあたるカラブリア州です。そして、「つま先」のその先には、シチリア島があります。カラブリア州は、イオニア海とティレニア海に挟まれ、また山にも恵まれた自然豊かな州です。歴史的に、2000年以上も様々な民族に支配されてきたため、現在州内に存在する5つの県は、それぞれが異なる文化・風習・方言を持っています。もちろん、食文化も県ごとに異なります。 素晴らしい観光地を有しているのに、交通の便が悪いからか日本から訪れるにはなかなかハードルの高いカラブリア州。今回は、そんな少しミステリアスな州へとお連れします!それでは、Andiamo!
5つある県の内、特に北部コゼンツァ県、中東部カタンツァーロ県、南部レッジョカラブリア県は歴史が古く、また規模も大きく有名です。では、各々の文化圏はどうなのかというと、大雑把にコゼンツァはナポリ文化圏、カタンツァーロはギリシャ文化圏、レッジョカラブリアは、アラブ・シチリアよりの文化圏というように分けられるそうです。
ワイン文化の歴史も長く、古代、カラブリア・ワインは非常に高い名声を得ており、ギリシャ人がイタリアを「エノトリア(ワインの大地)」と呼ぶようになったのは、カラブリアのイオニア海岸沿いのブドウ畑を讃えてのことであったと伝えられています。また、古代オリンピックの勝者にはカラブリアのクリミサのワインが「栄光にふさわしいワイン」として、勝者に与えられましたが、これは現在のチロDOCの祖先であったとされています。
さて、ここからはカラブリアの素敵な場所をいくつかご紹介。
まず、イオニア海に面するクロトーネから。クロトーネには、カポ・コロンナという古代ギリシャの遺跡があります。カポ・コロンナは紀元前303年にギリシャ帝国の植民地としての小さな町として誕生しました。5世紀までその町は存在しましたが、それ以降は廃墟化していきました。
小さな白い教会Santuario di Santa Maria di Capo Colonnaと周囲の遺跡を鑑賞したら、ハイライトの一本柱へ。遺跡の中を歩き進むと岬の先端部に一本の柱があります。海をバックに一本だけ凛として残っている古代ギリシャ神殿の柱です。真っ青な空とエメラルドブルーの海の中に真っ白な一本柱。ギラギラと照らしつける太陽と乾いた空気の中で目を閉じると、そこにあった町と人々の暮らしが浮かんできます。一瞬のタイムスリップも味わえるカポ・コロンナ、おすすめです。
カポ・コロンナから海岸線を約50km北上すると、チロに到着します。町の入口では、熟成樽がお出迎えしてくれて、ワインの町であるということを思い出させてくれます。高台にある町らしく、坂道の多い町です。ここからそう遠くない場所にブドウの畑が集中しています。畑のある丘陵地帯の頂上に立つと海も見渡せ、絶景です。
カラブリアの地形は平地が10%と少なく海岸線から車で20分ほどで丘陵地帯、そして、さらに少し行くと山になります。チロ・マリーナなどのビーチでは灼熱の太陽がサンサンと降り注いでいる真夏でも、山の中へ入ると肌寒いほど。その山には、シーラ国立公園があり、冬にはスキーもできるそうですよ。
さて、次はティレニア海側へと移動します。約160kmの道のりをカタンツァーロを通って移動です。カタンツァーロは、コゼンツァの南東にあるスキラーチェ湾を見下ろす標高343mの高台にある町。ビザンチンの町カタサリオンとして10世紀頃に設立されました。私がカタンツァーロを訪れたのはちょうど8月15日。祝日だったため、町はガラーンとしていました。そこで、唯一開いていたトラットリアで「あるもので作るよ」と言われてでてきたジャガイモとパプリカの炒め物が、シンプルなのに心に残る美味しさでした。
ティレニア海側で欠かせないのは、カラブリア屈指のリゾートタウンで、赤玉ねぎでも有名なトロペアです。崖の斜面に沿って広がる中世の街並みと、その下に広がるビーチが美しい眺めを作り出しています。さすが、DOP赤玉ねぎの生産地!街中どこを見ても、玉ねぎだらけ!街角では、おじさんたちがカードゲームをしているという、南イタリア独特の微笑ましい光景です。
トロペアも素敵ですが、私のおすすめはティレニア海側を南下したところにある、シッラという小さな町。特に、漁港となっているキアナレーア地区はどこを通っても絵になり、ずっと滞在したい場所です。海と並行して走っている狭い通りの曲がり角を海のほうにのぞき込むと、家と家の間にカラフルなボートが停めてあり、とても絵になる光景が見られます。
シッラをさらに南下すると、つま先の先端の町、レッジョカラブリアへ到着です。
レッジョカラブリアを訪れたなら、必ず訪れたいのがマーニャグレーチヤ国立博物館です。ここでは、「リアーチェの戦士」は必見。保存状態が驚くほどよい2体の古代ギリシャのブロンズ像で、世界的に有名な像です。1972年にレッジョカラブリア近くのリアーチェ海岸沖で、ダイバーによって偶然発見されました。当時世紀の発見と世界中のニュースに流れた出来事です。博物館には「リアーチェの戦士」以外にも、もちろんたくさんの歴史的な展示物があるので、お見逃しなく!
レッジョカラブリアのルンゴマーレ(ボードウォーク)近くに、いつも地元の人たちで溢れかえっている有名なジェラート屋、チェーザレがあります。ここでジェラートを買って、ルンゴマーレを散歩するのが私たちのお決まりのコースです。ルンゴマーレから海の向こうに目をやると見えるのはシチリア島。あまりの近さに泳いでいけるのではないかと錯覚するほどです。日没後、きらきらと輝くシチリアの町の光を眺めながら夜風に吹かれてルンゴマーレを散歩するのもオツ!
写真は、数年前に社員が現地で撮影した写真。
しかし、カラブリアといえば!やはり一番最初に頭に浮かぶのは「唐辛子」ではないでしょうか?一言で唐辛子と言っても、辛みの強さはさまざま。優しい辛みのPeperoncino Dolce(ペペロンチーノ・ドルチェ)やPeperoncino diavolicchio calabrese(ペペロンチーノ・ディアヴォリッキオ・カラブレーゼ)という小粒ですが辛さは一番の唐辛子まで10種類以上あります。カラブリアの人たちは、これらをミックスして好みの辛さを作るとのことです。
唐辛子をつかった保存食の代表的なものは、生シラスを唐辛子で漬けるロザマリーナ、もしくは、サルデッラ。イオニア海側ではサルデッラと呼ばれ、ティレニア海側では、ロザマリーナと呼ばれています。ティレニア海側では、イワシの稚魚が海を覆いつくすシーズンになると海がピンク色に見えることからこの名前がつけられたそうです。どちらも生シラスを唐辛子とオリーブオイルで2ヶ月以上漬け込んだ発酵食品。パンにもパスタにもご飯にも合う、万能食品です。
そして、なんといっても「ンドゥイヤ」!豚肉に唐辛子を入れ込んでつくられたサラミです。カラブリア中西部のスピリンガ村で生産されているのが本場ものだそうです。さらに、唐辛子もスピリンガの近くのモンテポーロ産を使うのが本場レシピだそうです。このンドゥイヤの歴史は、1800年頃のナポレオンの時代まで遡ります。当時フランスの占領下であったカラブリア州。ティレニア海に面したピッツォという町がフランス軍の拠点でした。この時期にフランス軍が持ち込んだフランス製のサラミ「アンドゥイッレ」にカラブリア名産の唐辛子を入れて作られたのが、始まりと言われています。
ここでカラブリアのアンティパスト4連発!海の近くのもの、山のもの、食べた場所が簡単に想像つく内容です。
最後に、ワインのご紹介。カラブリアのワインといえば、ギリシャオリンピックで勝者に与えられたというチロ!
カラブリアの太陽を受けて育ったガリオッポ種で造られるチロ・ロッソ。野生のベリー類やスミレ、スパイスの香りが複雑に絡み合うワインです。ンドゥイヤなどの辛みも包み込む味わいです。言うまでもなく、カポコッロやサルシッチャとの相性は抜群です!
カラブリアの煌めく海を想像させるチロ・ビアンコは、グレコ・ビアンコ種で造られています。熟したトロピカルフルーツや白い花の香りとミネラル感が口に含んだ瞬間にカラブリアの碧い海が目の前に広がる錯覚を覚えるフレッシュなワインです。
なかなか行きづらいカラブリアですが、まだまだ今回紹介しきれなかった美しい自然と美味しい郷土料理とワインがいっぱいあります。次の目的地はぜひカラブリアで!A presto!