Food History食材の歴史

パスタの謎 vol.2

みなさんこんにちは!
さて、前回の パスタの歴史vol.1でパスタはおろしたチーズをたっぷりとかけて食されていたと紹介しましたが、今ではイタリア料理のシンボル的存在となっているトマトソースの名がどこにも出てきていません。では、現在食べられているパスタソースの歴史はいつから始まったのでしょうか?

パスタソースと聞いて一番初めに思い浮かぶのは、何と言ってもトマトソースではないでしょうか?しかし、その歴史は浅く、実はパスタとトマトソースの初めての出会いは1790年。それもそのはず、トマトは1550年代にペルーからヨーロッパの植物学者により持ち込まれましたが、当時は観賞用とされており、トマトには毒さえあると言われていました。学者はそれをソースとして使う事を推奨していましたが、実際にトマトソースのレシピを発表したのが1世紀後の1692年。そしてパスタとトマトソースの組み合わせが初めて登場したのが更に1世紀後の1790年でした。

【左】有毒植物と言われ主に観賞用とされていたトマト。【右】イタリアで一番最初に生産されたトマトの缶詰

そしてトマトソースと並んでバジルペーストも世界中で人気がありますが、バジルペーストの一番古いレシピは、1863年に出版された『ジェノヴァの料理書』に掲載されています。当時はルッコラやセージなどのハーブが使用されており、バジルではありませんでした。バジルは、中世の末期にヴァスコ・ダ・ガマがインドへの初航海から持ち帰ると、バジルペーストがあっという間にジェノヴァの郷土料理に使われるようになったのです。

アル・デンテと言えば、皆さんも既にご存じの「歯ごたえのある」茹で方ですが、パスタが誕生した当時はクタクタに1時間以上煮込んで食していたことをご存じでしたか?それが17世紀初めになると茹で上がったら火からおろし、冷水で冷やし締める方法を推奨します。柔らかくしすぎないナポリ風のゆで方が広まるのは、実に19世紀。パスタは弾力と歯ごたえを残したゆで方は、パスタ工業の発展と共にイタリア全土に広がって行き、それがやがて「アル・デンテ」と言う言葉と共に普及し第一次世界大戦後はこのナポリ式のゆで方が標準の調理法となりました。

19世紀末から20世紀初頭にかけて工業生産の到来と共にパスタの生産量は飛躍的に増えました。人工乾燥の導入で気候条件に恵まれたナポリの品質に敵わなかったジェノヴァのパスタもナポリ産の品質に肩を並べることとなりますが、それまで市場を独占していたナポリとジェノヴァの勢いも徐々に失墜していきます。近代化によりパスタ生産もオートメーション化されると、1800年代後半から現在の大手パスタメーカーが次々イタリア各地に誕生。そのうちの一つが1908年にトレンティーノ・アルト・アディジェに誕生した品質と味わいを研究し、独自のパスタ製品を展開するフェリチェッティ社です。

フェリチェッティ社の創業者 ヴァレンティーノ・フェリチェッティ氏【右】と当時のパスタ生産の様子【左】

そのフェリチェッティ社のパスタを使ったミシュラン星獲得レストランのシェフ二人をご紹介します!一人目は、ミラノに2019年11月にオープンしたAALTO(アールト)。「国境なき自由な料理」をコンセプトに料理を展開しており、2021年コロナ禍で苦戦を強いられる中、ミシュラン一つ星を獲得した日本人シェフ岩井武士氏です。

そして、オオトリにはMONOGRANOのアンバサダーでもあり、ミシュラン三ツ星シェフでもあるノルベルト・ニーデルコフラー氏。現在ではレストラン業界でもサステナブルを意識したレストランが増えてきておりますが、その先駆け的存在がニーデルコフラー氏です。 同氏のレストランではフォアグラなど輸入食品を一切使用せず、地元でとれる季節の食材だけを使用。それまで日の目を見ることのなかった食材や農産物への再評価に留まらず、食品廃棄を最小限に抑えることなど自然との共生という哲学『サステナブルなガストロノミー』を打ち出しました。また、その哲学やドロミーティの美しい自然、同氏の80のレシピを収めた10年間の集大成を集約した「Cook the Mountain」を2020年に出版しました。

また2015年から毎年、同じ理念に共感した世界のトップシェフが終結し、「サステナブル」や「食品廃棄」、「レストラン業界の労働問題」などにフォーカスしたシンポジウム「Care’s」も開催。理念や哲学を若いシェフ達に継承していく取り組みも行っています。


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